<今月の禅語>     ~朝日カルチャー「禅語教室」より~


   好語不可説尽(大慧武庫)

     好語
(こうご)説き尽くすべからず



 中国・宋の時代の禅匠、五祖法演禅師がわが弟子の晋山(一寺の住職として

入寺する)に当たっての心得として説いた4つの戒めの一つの語である。

  第一に「勢い使い尽くすべからず」

  第二に「福、受け尽くすべからず」

  第三に「規矩
(きく)行じ尽くすべからず」

  第四に「好語
(こうご)説き尽くすべからず」

  何が故ぞ、好語説き尽くせば人必ずこれを易しとする。

  規矩
(きく)行じ尽くせば、人必ず繁とす。福もし受け尽くせば、

  縁必ず孤なり。勢いもし使い尽くせば、禍い必ず至る。



 かって私も承福寺に晋山するにあたっては先輩和尚たち

から「新到3年生味噌を食わず」ということを言われた

ものだった。禅門の新参者の3年間は一人前とは見なさ

れず何事においても自重し、古いしきたりや決まりごとに

対してもまずはよくこれに従い、よく観察し、いたずらに

新たな改革を試みずによく学びなさいという教訓である。

 若い時というのはついつい、勢いにまかせて調子に乗り、

周囲の助言も聞かずに突っ走ることもある。若さの勢いでの

積極的、意欲的であることは結構であるが、その若さゆえに

古いしきたりを壊し、先人の築いてきた良き伝統までの改め

ようとして周辺の人たちと衝突したり、問題を起こしやすい。
 
 未熟な者が立場を得、権力を得たりすること危険なことも多い。調子の良い時、

順調な時こそ自制し慎重でありたいものである。「栄枯盛衰試練と思え」言葉が

ある通り、のりのりの調子の良い時こそ試練と受け止め自戒しなければならない。

 第二番目の「福、受けつくすべからず」。福というものはその人物に応じた

生涯の福分があるともいう。福は陰徳、隠れた善行を多くおこなう人のところに

集まってくるらしい。だが、いくらその福分がたくさんあるからといって、

湯水のように無制限に使い過ぎればその徳分は失われ、金の切れ目は縁の切れ目

で人も寄り付かなくなり淋しい人生になりかねないだろう。

  第三番目には、「規矩(きく)、行い

つくすべからず」。規矩というのは戒律

などの決まり事である。戒律はこうだ、

規則はこうだと大衆に無理やりにおし

つけては、人に嫌がられ人は逃げ出して

行くことだろう。

 第四番が、「好語
(こうご)、説き

つくすべからず」。

 いくら立派な教えや教義であっても微に入り細にわたって説くのは親切かも

知れないがあまり説き過ぎ、美辞麗句を使いするものでるぎると、その言葉の

価値が薄く、深みがなく軽いものになって心に響かない。浅い川は音を立てるが、

深い流れは音もなく悠然として流れるようなものである。心貧しい人は語り過ぎ、

豊かな人は言葉少なくピリッとした一言に重みがある。人生の生き方として

何事においても余白、余裕を大事にしたいものである。

前回までの禅語はこちら

和敬清寂 東山水上行 葉々起清風 雨滴聲
吾心似秋月 風露新香隠逸 看々盡臘月
天行 健 梅花和雪香 便是人間好時節 天上天下 唯我獨尊
一華開五葉 老倒疎慵無事日 青山元不動 歩々是道場
白雲抱幽石 掬水月在手 体露金風 楓葉経霜紅
酒逢知己飲 春在枝頭已十分 一大事 花簇々 錦簇々
巌谷栽松 平常心是道 雲無心出岫 他是不有吾
微風吹幽松 一期一会 開門落葉多 鶏寒上樹鴨寒下水
夢=(梦) 萬物生光輝 生死事大 無常迅速 不住青霄裡
好事不如無 江碧鳥逾白 山青花慾 坐久成労 (碧巌録) 忘筌 (伝灯録)
知足 足るを知る 池成月自来 無功徳 〈虚堂録〉 明歴々露堂々
惺々著 木鶏鳴子夜 烟霞不遮梅香 張公喫酒李公酔
山中無暦日 看花須具看花眼 松無古今色 竹有上下節 一行三昧
放下著 萬里無片雲 独来独去 無一随者 百尺竿頭進一歩
莫妄想 雪寒北嶺梅香南枝 庭前柏樹子 渓声便是広長舌
風定花猶落・・ 薫風自南来 鳥倦飛而知還 一聲雷震清風起
曹源一滴水 深林人不知 明月来相照 采菊東籬下 悠然見南山 風吹不動天辺月
春入千林處々花 主人公 好雪片々不落別處 笠重呉天雪 鞋香楚地花
花看半開 酒飲微醺 関  (碧巌録) 一鉢千家飯 孤身万里游 寒時寒殺闍黎・・
大道透長安 神通並妙用荷水也搬柴 徳不孤 必有隣 日々是好日
自浄其意 喫茶去 本来無一物 行雲流水
大道無門 身心脱落 和光同塵 至道無難
随処作主 萬法帰一  別無工夫 真佛坐屋裏
四海隆平煙浪静 萬里一条鉄 心随万境転 拈花萬国春
一以貫之 松老雲閒曠然自適 水自竹辺流出冷 竹筧二三升野水
雲在嶺頭閑不徹 秋風淅々 秋水冷々 無事是貴人 山呼萬歳声
一 (いち) 福聚海無量 春色無高下... 曇華再發一枝春
破衲遂雲飛、、 牀脚下種菜 截断人間是与非、、 話尽山雲海月情
泣露千般草、、 空手把鋤頭歩行騎水牛 金以火試人以言試  
古人刻苦光明必盛大也 雨洗風磨 眼横鼻直 拈華微笑
始随芳草去 又逐落花回 百花為誰開 渓深杓柄長 忘却百年愁
千江同一月 万戸逢尽春 幾時苦熱念西風、、 把手共行 宝所在近更進一歩
龍吟雲起 虎嘯風生 枯木倚寒巌 三冬無暖気 作麼生 禍不入慎家門
行到水窮処 坐看雲起時 廬山烟雨浙江潮 無一物中無尽蔵  大唐打鼓新羅舞
百雑砕 樹下石上 一日不作一日不食 聞声悟道
自灯明・法灯明 道得也三十棒道… 火炉頭無賓主 年々歳々花相似・・
耳聞不似心聞好 下載清風 清流無間断 碧樹不曾凋 一撃忘所知
松樹千年翠 不入時人意 一挨一拶  百不知百不会 非風非幡
圓光獨露 山花開似錦 澗水湛如藍 擔雪塡古井 香爐峰雪撥簾看
紅炉上一点雪 灰頭土面 日照昼 月照夜 其知可及也・・
宝剣在手裏      


朝日カルチャー「禅語教室」は7年半をつとめ終え、閉講いたしました。

尚、この「今月の禅語」は継続いたします。