<今月の禅語>    

白雲抱幽石 (寒山詩)  白雲幽石 (ゆうせき)を抱 (いだ)


深山幽谷の中、騒々しい世間を離れて一人超然とした脱俗の
心境を詠った寒山の詩の一節。


重巌(ちょうがん) に我れト居(ぼっきょ)

鳥道
(ちょうどう)人迹(じんせき)を絶す

庭際何んの有る所ぞ

白雲幽石を抱く

茲に住むこと凡そ幾年

(しばしば)春冬の易(かわ)るを見る

語を寄す鐘鼎
(しょうてい)の家

虚名定まらず益無し


重巌はごつごつと連なる岩山、ここに私は占いによって、

住まうことになった。

ここは、鳥だけが通うような、人迹未踏の険しい所である。

庭先には何があるかというと、

白雲が深々とあって岩を包みこんでいる、そういう静寂なとこどである。


 

私はここに住んで幾十年になろうか。

確かに、春、冬等季節の移り変わりをしばしばみてきたものである。

ここでの暮らしは、貧しいものであるが、精神的には実に豊かで、

何のとらわれも無く、楽しいものである。

そこで鐘鼎(食膳の音楽を奏で、豪華なご馳走を盛った宴会)=富貴、

栄華を誇る人々に一言もの申しておきたい。

あなた方の今の栄華は空虚なもので、精神的世界から言えば全く

意味の無い無益なものである。

ここに世俗、俗情を離れ深山に閑居を楽しむ、寒山の境涯に禅境をみる。



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