<今月の禅語>     ~朝日カルチャー「禅語教室」より~


   百雑砕 (ひゃくざっさい) (碧厳録)




 百雑砕とは全てのものをこっぱみじんに打ち砕くということである。

打ち砕くとは物体や器物のことだけではなく、心に起こる煩悩妄想、是非

善悪や浅はかな知識によっての執われ等、思慮分別の一切を木端微塵に打ち

砕いてしまえということなのである。我われ凡夫に尽きない三毒五欲の煩悩、

地位、名誉の一切合切を捨て切れと喝破する語が百雑砕である。


 昨年福岡ソフトバンクホークスのチームのキャッチ

フレーズが「ふり切れ!」であった。勿論バットを振り

切れであり、投手は思いっきり腕を振り切っての一球入魂

の投球のことなのだろう。バッターは中途半端なスイング

でなく、迷いなく思いっきり振りぬいてヒットをめざそう

と言う意味合いであったことだろう。まさに百雑砕の

思いで、迷いもとらわれも打ち砕いての「フリキレー!」

であってほしいと願ったことである。

 ところが、そのテレビのCMで人気選手の何人かがテレビ画面から視聴者に

対して「フリキレー!」と叫んできたのである。冗談ではない、見せられ聞か

される視聴者としていささか不快な思いにさせられたことである。CM製作者の

認識の問題で選手にはなんら罪はないが、その時私はお前らに「フリキレー!」

と言われる筋合いではないと思ったものである。お前ら選手自身が自分に向か

っていうべき言葉ではないのか!と言いたくなったものである。そんな危機感の

ない他人事の「フリキレー!」だったからだろうか、昨年のチームは結局

Bクラスにおわりクライマックスシリーズにも出れずに終わったのである。


 是非善悪、差別平等、相対の社会の中で正邪を分かち

迷悟を作りそれにとらわれて、ああだこうだとさらに

迷いを深めたりもする。そんな迷いや煩悩、一切の

計らいを打ち砕いてしまいなさい!と言う禅語である。

 グジグジとああすべきだ、こうすりゃよかったと

いちいち細かいところにとらわれ悩んでばかりでは

先へ進めない。そんな一切を木っ端微塵に打ち砕い

てみる原点回帰にも通じるかもしれない。

 因みに今年の福岡ソフトバンクホークスのキャッチフレーズは「今年は

やらんといかんばい!」となっている。いささか頼りなく、力ないキャッチ

フレーズに見えるが、去年の反省にたって、今年こそはと言う原点回帰と

言うことなのか、今現在はパリーグ首位争いで頑張っているからこそ、

ファンとして百雑砕の語を贈り、今こそ「フリキレ!」と言っておきたい。




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