<今月の禅語>
風露新香隠逸花 (蒲庵稿) 〜風露(ふうろ)新たに香る隠逸(いんいつ)の花〜
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大徳寺にまつる利休居士の像 |
略意 菊の花が露を宿し、風を受けてその香りをはなちだした 茶道の大成者、千宗易(利休)へ参禅の師である大徳寺の古溪和尚が祝意を込めて贈った偈頌の一節。 正親町(おおぎまち)天皇より関白職に任ぜられた秀吉は報謝の為に宮中、小御所で黄金の茶会を開いた。 その茶会の後見役の宗易はまだ一介の町民であり、宮中に上がれなかった。そこで秀吉は大徳寺の大休和尚からの 利休居士の名を以って新たに天皇へ奏請して、千宗易に「利休居士」の号の勅賜(ちょくし)を受けさせた。 このことを師の古溪和尚は喜んで賀頌をつくった。
庚老(ほうろう)は神通の作家(さっけ) 飢え来れば飯を喫し、茶に遇うては茶 心空及第して等閑に看る 風露新たに香る隠逸の花
注釈 庚老は庚居士として神通力さえもつ唐時代の名だたる禅者である。 (利休居士も)喫茶喫飯の中に自由無碍なる神通力が現れていて、仏法優れた境地を得ている。 庚居士は大悟して、「心空及第して帰る」と述べているが利休居士も庚居士と同等に悟りの境涯に及第している。 私は本当に心から喜びに堪えない。今ふと庭を眺めていてたら、菊の花が露を帯びて咲き気高い香りを放っているよ。 隠逸の花とは闇夜その所在がわからなくても、その清香によって存在が知れることから、菊の花の別名とされる。 これを古溪和尚は利休にたとえた。 |