こころの紋様 -ミニ説教-
〜説教は心を汲むべし〜
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喜びと感謝の種をまけ
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ずいぶん昔のことです。昔この地区では地区の親睦を図る運動会が開かれていました。いろいろの 競技が進み、最後の種目が部落対抗リレーです。小学生・中学生・高校生・青年・四十歳以上と男女を 含むリレーで一番のハイライトの種目です。わが門前部落では四十歳以上で走れる男性が誰も来て いないと言う事から、私が時々ジョギングをしているようだからと無理やり引っ張り出されてしまいました。 小学生時代から運動会ではいつもビリだった私が、この年齢で小さな運動会とはいえ選手になれた ことは照れ臭くもあり、嬉しくもあって喜んで出させていただきました。私がスタートを走りその後の走者 が頑張り、わがチームは接戦しアンカーは一、二位ほとんど同時のゴールでテープを切りました。 審判の判定の結果は二位ということになってしまいました。 |
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その結果発表の後アンカーを務めた小学生の女の子が 憤然ととして「おしょうさん、あの審判はおかしい。 アタシの方が先にテープを切ったのよ」とスタートを走った 私に不満と悔しさをぶっけて来ました。「そうだ、そうだ確か に智ちゃんの方が勝ってたよ。きっと勝っていたね、悔し いね」と先ずその子の悔しいという気持ちを受け入れて やればよかったのに、「うーん、難しい判定だったけど、 |
もう競技も終わったし、表彰式を終わったんだから仕方ないね。智ちゃんも皆んな一所懸命走ったし、 みんな頑張ったんだから、それでいいじゃないか。みんな楽しんだのだから。負けたのは悔しいけど、 相手のチームの人たちはあんなに喜んでいるでしょうが、相手を喜ばせてあげたと思えばいいん じゃないか」と私は慰め、なだめたつもりでした。ところがその子は「そうかも知れんけど、アタシは おしょうさんみたいにサトッテないから、そげな気持ちになりきれん」と一層悔しそうな顔をして走り 去ってしまいました。このとき私の日頃の説教なんて所詮、こんなものだったのかも知れない、建前 ばかりで・・・。本当に悩む人、悲しむ人、心を痛めている人の心を汲み、そして受け入れて心和ませ、 教え諭さねばならないのに、自分の納得だけの心無いお説教では何ん煮もならないのだということを、 この少女に教えられたことでした。 |