こころの紋様 -ミニ説教-


〜 けんかのすすめ 〜

―人間形成に欠かせぬ過程―



 昨年はいじめが原因とされる小中学生の自殺と言う悲しい事件が多発し、大きな社会問題となりました。

“いじめっ子”と“いじめられっ子”は昔から子供たちの世界では当たり前で驚くにはあたらないと思われ

がちです。ところが、最近の子供たちの世界を見るとき、取っ組み合いのけんかがめっきり減って、逆に

陰湿ないたずら、口げんかならず、ネット上における悪質な書き込み中傷が増えていると言われています。

けんかが減ったのは結構ではないかと思われがちです。だが、実は児童心理学者たちは一様に「殴り

あうけんかは後でさっぱり仲直り出来やすいとい言われ、殴り合い取っ組み合いのけんかはむしろ集団の

中で子供の主体性を発達させるもので、その取っ組み合いや殴り合いを体験せずに大きくなった時、その

子供たちはかかえって校内暴力や非行に走りがちになる」と警鐘を鳴らしています。

 一般に幼児のけんかは、よく遊ぶ子ほど多く、仲良しの友達

のバロメーターなのだと言います。私も子供の頃はよくけんか

をして、ひっかいたり、ひっかかれたりタンコブを作り、怪我を

して帰ったものです。そしてそのタンコブや怪我を、転んだ

ためだとか、柱にぶっけたとか言って親に言い訳をするのに

困ったものです。けんかをして勝っても負けても親には内緒

です。いくら殴り合ってもお互い仲間同士、お互い無意識に

かばい合ったのでしょう。

  本来、けんかは子供の主張や要求がお互いにぶつかりあって起きるもので、子供はけんかをすること

によって相手の主張や気持ちに気づき、集団のルールを知っていくのです。自分の主張と相手の言い分、

また集団の決まりをどう調整し保っていかねばならないかを、痛い体験を通して学んでいくものです。

だから「けんかは人間形成の大切な手段で、大人社会に入るための準備段階だ」と児童心理学者は

述べています。昔は、子供のけんかには大人は手出し口出しをしないのが社会の暗黙のルールでした。

子供のけんかは子供の世界の問題であり、体を通して自主的に解決すべきこととして大人は立ち入ら

なかったと思います。

 ところが、最近塾だ、お稽古事だと、子供の世界も忙しくなり、

遊び仲間が成立しにくくなっている上、遊ぶ場所は家庭、

学校、塾など、どこも大人の目が届くところにあって、子供の

けんかが始まれば直ぐに大人が飛んで行き仲裁をしてしま

います。殴り合い、取っ組み合いをしたくても出来ない環境が

作られ、大人による子供世界の管理がなされすぎてかえって

マイナスだとも言われます。

 けんかと言うと直ぐに暴力を受け取り、野蛮だとか非人間的だとして否定しがちです。

しかし、子供のけんかは発達段階、人間形成の大切な過程であるのです。この成長過程であるけんかを

取り上げられた子供たちは、体を通した集団のルールや相手との協調をはかる学習が出来にくくなり、

集団社会への不適応を起こし、校内暴力や家庭内暴力や非行のどの行動に走ってしまうのかもしれ

ません。けんかを知らずに、自立心が育たないまま大きくなっても、何かに立ち向かう気力のない

“いじめられっ子”になることも考えられることです。



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