こころの紋様 -ミニ説教-


〜 成道会って何のこと? 〜

―外国人の見た“仏教国日本”―



 お釈迦様は苦行6年、35歳の臘月(12月の別名)8日、暁けの明星の輝くを見て、忽然として悟りを

開かれました。この12月8日こそ我が仏教徒にとっては記念すべき大事な日なのです。

お釈迦様のご誕生を祝う4月8日の降誕会(こうたんえ・・花祭り)と入滅(息を引き取られた)2月15日の涅槃会

(ねはんえ)
、そして、お悟りを開かれ、仏としての立場に立たれたこの12月8日を成道会(じょうどうえ)と云い、

仏教の三大行事とも言えるのです。

 しかし、この日を私たちはどれだけ意義づけ、仏陀の大慈悲

に感謝を捧げてきたでしょうか。いや、この12月8日が何の日

であるかさえ知らない人がほとんどかもしれません。

私の修行時代のずいぶん昔の話ですが、当時大徳寺の修行

専門道場にウォールデンと云うロシア系の米国人が熱心に

坐禅に通っていました。彼は禅修行のかたわら同志社大学の

講師をしていたのです。

 その彼が12月のある日、憤慨して道場へやって来て「日本と云う国は仏教の国だと思っていましたが、

無宗教の国ですか? 私し、分らなくなってしまいました」とやぶから棒に言うのでした。

よく話しを聞いてみると、12月8日、講義を前にして彼は「今日は皆さんにとって大事な日ですね。

何の日だか知ってますね」と学生たちにたずねたそうです。坐禅を通して仏道を学ぶ彼からすれば、仏教国

である日本の国民なら誰れもが12月8日の今日がお釈迦さまの成道の日であることぐらいは当然知って

いることだと思っての質問だったのです。

 ところが、キリスト教系の大学とはいえ、決して熱心なクリスチャンばかりとは限らず、むしろどちらかと云えば

仏教徒のほうが多いはずなのに、誰一人としてお釈迦さまのご成道の日であることを知らなかったのです。

彼が嘆くのも無理は無い。欧米であれば、今日はイエス様の何の日であるとかは、誰に尋ねても知っている

事柄だからです。そんな彼からすれば、仏教国の日本のハイレベルの学生が誰も成道会を知らなかった

ということは、彼にとって非常に奇異に感じられたのでしょう。

 12月8日がお釈迦さまの三大因縁の日の成道の日であることを

知らなかったからと云って、信仰の深浅に関わるわけではないかも

知れません。欧米と日本の信仰形態はまったく違うのですから、

西洋的信仰観で見たら、日本人は実に信仰的観念が薄いといえる

かもしれません。 しかし、それは、日本と欧米の信仰観の違いで

あり、日本人が全く信仰心がないわけではなく、 信仰の形態が

まったく違うということを彼は理解できないでいたからです。

 日本には、お釈迦さまの因縁日を祝う形式的なことより、日々に仏の心を頂き、感謝と自らの精進を誓い、

その意識無く、日常の中に信心を生かしている日本人の独特の信仰観があるのです。

それは日本人自身も気づかないいることかもしれません。とはいえ、12月8日が太平洋戦争開戦の日で

あることを忘れても、仏教を説かれ、信仰による救いの道を開いてくださったお釈迦様が、偉大なる悟りを

成就なされた成道会を知らない仏教徒であってはならないと思います。仏教徒でありながらクリスマスを

祝うのもいい、だが、自分たちが信ずる宗教の教主であるお釈迦さまの降誕会・成道会・涅槃会の三仏会

(さんぶつえ)ぐらいはせめて、身体を浄め、心静かにお釈迦さまへの真の合掌を捧げる日としたいものです。

ただ、お寺だけの行事でなく檀信徒こぞって本尊様にぬかずき、報恩の感謝を捧げたいものです。


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