こころの紋様 -ミニ説教-

〜受戒のすすめ〜

仏教徒の証としての戒名




人間国宝だった落語家の柳家小さん師匠が亡くなり、しめやかに葬儀が営まれた旨のTV放映が流れていた。

そのニュースワイドの中で小さんの法名にまつわる話が耳に入った。どんな戒名なり法名であったかは記憶

していないが、その戒名は小さん師匠自らが生前に付けておいたものだと言うことでした。ワイドショーの

司会者は「小さん師匠らしい」とその自前の戒名を用意する周到さを褒め上げていました。それを耳にした

私は、小さん師匠が本当に戒名なり、法名の意味合いをご存知であったのだろうかと、ふと思ったものでした。



授 戒 会 の 風 景
一般的には戒名なり法名は死者に付けられる名の如くに受け

取られていますが、実は戒名とは死んだ人につける名前では

なく、戒名とは「仏教に入信し、仏教の戒律を守って仏道の

精進を致します」と言う受戒の儀式を受けて、授戒の導師より

授けられるべき名であるべきです。法名と言うのも仏法の法で

仏教信心の証としての名であるのです。信心も無く、戒律も知ら

ないで、単に自分が好きな漢字や語をもっともらしく並べても、

本来的には何の意味も無く茶番的でもあると言えるのです。

宗教には何教であれ、何らかの戒(いましめ)と律(規律)があります。キリスト教のモーゼの十戒は有名です。

仏教には五戒とか八戒、十重禁戒などいろいろあります。古代インドの仏教教団には二百五十戒、尼僧教団

には五百戒もの戒律があったそうです。何百人もの人々が集まる社会には色々の問題がおきるものです。

その社会秩序を保つ為には規則や罰則としての戒めが必要でした。そこに戒律が確立されてきたのです。

さらに、一般仏教徒に対しては基本的戒律が五戒として定められています。日本に戒律を最初にもたらし

たのは、中国の渡来僧、彼の鑑真和上です。
 1.不殺生戒(ふせっしょうかい)・・生き物をむやみに殺すことなかれ

 2.不偸盗戒(ふちゅうとうかい)・・盗むことなかれ

 3.不邪淫戒(ふじゃいんかい)・・・淫欲にふけることなかれ

 4.不妄語戒(ふもうごかい)・・・嘘偽りを言うことなかれ

 5.不飲酒戒(ふおんしゅ)・・・・自制心を失わせる酒は慎むべし。

 こうして「五つの戒め」として並べれば、ごく当たり前の道徳に過ぎませんが、仏教における戒律とは、単に

「殺生をしてはいけない」とか「盗みをしてはいけない」とか言うことだけでなく、自らの自覚において身をつつ

しみ、言葉をつつしみ心を慎んで心身を清浄にして仏に通じ、自らが仏(悟り)の世界へ至るためのものです。

だから受戒を受け、戒名なり法名を持つということは、自ら戒を持し、日常生活の中に実践していくことがなけ

ればならないのです。仏教は学問として学ぶことではなく、行うことであり、毎日の生活の中に生かされて

こそ意義があることだと思います。


最後までお読み頂いてありがとう御座います。

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